ファッションコレクションではさまざまなテーマが打ち出されていますが、近年では社会情勢や社会に対する声を表明しているコレクションも見られるようになりました。その中には「平和の大切さ」や「環境問題への関心」をテーマに掲げ、世界に向けて発信するブランドも登場しています。
今回は、その中でも反戦や環境保護をテーマに掲げたハイブランドのコレクションをピックアップ。特に、2025年秋冬のコムデギャルソン(COMME des GARÇONS)、バレンシアガ(Balenciaga)の2020年・2022年ウィンターコレクション、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)、の3つのブランドをご紹介したいと思います。
■コムデギャルソン 2025年秋冬コレクション:「THE HELL WITH WAR」
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日本を代表する前衛的ブランド”コムデギャルソン(COMME des GARÇONS)”は、ファッションを通じて社会に問いかけるコレクションを発表し続けています。2025年秋冬コレクションでは「戦争と平和」をテーマに、戦争の悲惨さと、その後に訪れる再生の希望を表現しました。
ランウェイは瓦礫が散らばり戦場のような演出が施され、暗闇の中をゆっくりと歩くモデルたちがその空間に緊張感を与えました。彼らは、ミリタリー調のコートやダメージ加工が施されたジャケットをまとい、戦争の現実を象徴するようなスタイリングで登場。
ミリタリーの再編以外にも印象的だったのが、モデルたちが被っていた草木が生い茂るヘルメットです。軍事的な装備品であるヘルメットに生命力を感じさせる草木を組み合わせることで、「破壊の先にも再生がある」というメッセージを込めたとも考えられます。
ショーの後半には、無機質なグレーや黒の衣装から一転し、純白のドレスやミニマルなシルエットのジャケットが登場し、平和への希望を表現しました。ファッションを単なるデザインではなく、社会の課題を考えさせるものとして機能させるコムデギャルソンのスタンスが、このコレクションからも強く感じられました。
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■バレンシアガ:環境問題と反戦をファッションで表現
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バレンシアガは、デムナ・ヴァザリアのディレクションのもと、社会的なメッセージを込めたコレクションを発表してきました。特に2020年と2022年のウィンターコレクションでは、環境問題や反戦をテーマに掲げています。
2020年ウィンターコレクションでは、ランウェイを水で覆い、沈みゆく都市の未来を象徴する演出が行われました。水面に反射する光が幻想的な雰囲気を醸し出す一方で、それは気候変動による海面上昇の危機を暗示していました。デザインはリサイクル素材を多く使用し、環境負荷を最小限に抑えたアイテムが中心となり、ラグジュアリーファッションの中にサステナビリティの概念を取り入れた重要なコレクションとなりました。
2022年ウィンターコレクションでは、ロシアのウクライナ侵攻が始まった直後というタイミングもあり、戦争に対するメッセージが込められていました。デザイナーのデムナ自身も戦争難民という経験があり、ショーの中止も検討したと言います。
防護ガラスで区切られたランウェイでは猛吹雪が吹き荒れ、厚手の防寒具をまとったモデルたちが歩く姿は、戦火の中で避難する人々を想起させました。さらに、ウクライナの国旗を連想させるブルーとイエローを取り入れたアイテムが登場し、反戦のメッセージを強く打ち出しました。
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■ステラ・マッカートニー:エシカルファッションの先駆者
サステナブルファッションの先駆者であるステラ・マッカートニーは、長年にわたり動物愛護や環境保護に取り組みながら、美しいデザインを提供してきました。彼女の2022年パリコレクションでは、特にエシカルファッションと反戦のメッセージが融合したコレクションが展開されました。
ショーの冒頭では、1963年のジョン・F・ケネディの反戦スピーチが流され、その後ランウェイには、動物由来の素材を一切使用せず、リサイクル素材やオーガニックコットンを取り入れたアイテムが登場しました。ナチュラルなカラーリングと流れるようなシルエットのデザインは、環境と共存する未来を象徴するものであり、ステラ・マッカートニーが提唱する「サステナブルなラグジュアリー」を強く印象づけました。
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いかがでしたでしょうか。
新作発表の場だけでなく社会へのメッセージを掲げたコレクションをお届けしました。同じテーマでもデザイナーによって表現が異なるのも興味深い点ですね。