「メンズファッションは戦争から誕生した物が多くある」というのを聞いたことはありますか。実は戦争によって開発されたものは多く、ランドセルやティッシュなどの日用品もその一例と言われています。
ファッションも戦争の影響で多くの進化や影響を受けてきた業界の一つなのですが、今回はその中でもカーディガンとトレンチコートについてご紹介したいと思います。
温度調整が簡単にできるカーディガン。着脱のしやすさから開発されたアイテム。
秋から春にかけて室内と屋内、室内でも暖房の効き具合などにより1枚あるととても便利なのがカーディガンですよね。
黒のカーディガンはジーンズと同様、皆さま1枚は持っている必須アイテムではないでしょうか。
そのカーディガンも実は戦争から開発されたアイテムと言われています。
ときは1854年のイギリス。
当時のイギリス軍はフランス軍やオスマン帝国と連合国を結成し、ロシア帝国と戦争を行っていました。寒さが厳しくなってきた10月末から始まったこの戦いに、イギリス兵士たちはセーターを着て戦地に出向いていたと言います。
戦地にて負傷した兵士の手当をするために衣服を脱がすのですが、セーターを脱がすのに大変苦労したそうです。そこでイギリス陸軍に所属していたカーディガン伯爵は「もっと簡単に着脱できる衣服はないだろうか」と考え、セーターを前開きにし、ボタンを留めたカーディガンを考案しました。これが兵士の間で大変重宝され、カーディガンが誕生したと言われています。
ボタンを留める手間はあるかもしれませんが、簡単に着脱でき温度調整もできるので150年以上経った今でも定番アイテムとして受け入れられているのですね。
コートの完成形とも称されるトレンチコート。さまざまな工夫が凝縮されたデザイン。
カーディガンと同じように戦争によって誕生したファッションアイテムの一つにトレンチコートがあります。
こちらも第一世界大戦中のイギリス軍から誕生したと言われています。
当時、多くのイギリス兵が欧州にも戦いに行っていました。
欧州の冬はイギリスよりも寒さが厳しく、イギリス軍の服装では戦えるような洋服ではなかったと言います。
また塹壕(ざんごう※)では雨水などにより浸水の影響で水浸しになることも多く、普通の洋服では不利になっていました。
「雨にも耐えられる丈夫な服が必要だ」ということになり、当時の重たいゴム引きのレインコートにかわる防護服の開発が進みました。
生地にはバーバリーのギャバジン(羊毛を原料とした糸を織り上げる前に防水加工を施し、高密度で織り上げた生地)を採用、戦地で活躍できるように設計されたデザインに仕上げたトレンチ(塹壕)コートが完成しました。
その特徴をいくつか紹介したいと思います。
-
ガンフラップ
女性用の右前合わせなら左肩、男性用の左合わせなら右肩に施されているガンフラップ。生地が二重になった部分は名前の通り、ライフルを発砲した際に肩への衝撃を和らげるために付けられたと言います。
-
エポレット
肩の部分に付けられたベルト状の部分。トレンチコートが開発された当初は、軍の階級を表すバッジを付けていたとされていますが、その他にも双眼鏡や水筒のストラップなどベルトに通し、ズレ防止に役立っていたとされています。また残酷なエピソードになりますが、負傷した兵士を救済するときに引きずるための持ち手としても使用されていたとも。
-
インバーテッドプリーツ
バックスタイルに大き目のプリーツが入った裾(すそ)。腰の部分まで広く切れ込みの入ったプリーツは珍しく、内側のボタンを外すとさらに裾が大きく広がる構造になっています。これは乗馬するときに開いた足の動きを洋服が邪魔しないようにという工夫がされ、とても機能的なデザインです。
その他にも袖(そで)部分にバックルをつけ雨水の侵入を防ぐようにしたり、腰ベルトにDカンを付け手りゅう弾などが装着できるようになっていたりと、シンプルながらも機能的なデザインになっているようです。シンプルながらも頑丈で、しかもとても機能的なトレンチコートが「コートの完成計」とも言われるのも納得がいきますね。
現在、市場にでているトレンチコートにもデザインとして名残があるものもありますので、その意味を知っているとまたファッションを楽しめますね。
※塹壕(ざんごう)とは
敵弾から身を隠して行動するために掘った空堀、溝
コート類のボタンやポケットが大きめなのにも理由がある
トレンチコートやPコートなど、戦争から開発されたコートには同じ特徴があるのをお気づきでしょうか。
・ボタンやポケットが大きい
・ダブルボタンになっている
ボタンやポケットが大きい理由は、手袋をしたままでも着脱や出し入れができるように大き目に設計させていると言います。
またダブルボタンになっているので、左右どちらから強風が来ても避けられるように右開閉でも左開閉でも変更できるようになっていて、ボタンが1つ壊れても留められるように設計されているそうです。
いかがでしたでしょうか。
1つのファッションアイテムでもその誕生や部品の意味を知ると、より深く楽しむことができますし、誰かに話したくなるネタになりますね。
参考URL
・OTOKOMAE
https://otokomaeken.com/mensfashion/26801